登山初心者失敗記② 山をなめて遭難しかけた話
遭難といえば2000m越えのアルプスで発生するものと思っていませんか。実は案外すぐそこに潜んでいるものなのです。特に初心者で自分の実力を超えた山に向かった際、下調べを怠ったとき際に発生するものです。
今回はまんま上記の意識のまま自身の実力に見合わない山に向かった私のお話です。遭難は恐ろしい。
舞台(大普賢岳/奈良県)
大普賢岳は奈良・大峰山脈の一つで標高1780mの山です。修験者の山として知られ、行者跡や鎖場・梯子が非常に多い山です。また、周囲は山に囲まれ、町は全く見当たりません。公共機関でのアクセスが大変です。
失敗記
ルート
当時私が通ったのは下のルートです。和佐山ヒュッテまで車で乗り付け、大普賢岳に向かい七曜岳へ、そのまま激下りを下り、無双洞から登り返して和佐山ヒュッテに帰るコースです。大普賢岳の周回ルートとしては非常にメジャーです。「大普賢岳としてはメジャー」というところが味噌で、大普賢岳という山自体そんなに人気があるわけでもないですし、登山したのが12月ということもあり周囲で登山している人は数人だけでした。また、このルートの登山地図コースタイムは7時間20分程度だったと思います。
辛いポイントは下の地図にマークしましたが、1700mから1300mまで一気に下る激下りとその後疲れた体での登り返しがとにかくつらいポイントです。
失敗記
出発
会社終わりに出発し、大阪のドミトリーで前泊、翌日さらに2時間車を運転し、和佐山ヒュッテについたのは午前9時30分ごろ。周回コースは午前10時に出発しました。
その時ヒュッテのお姉さんにコースタイムを聞いたところ大体皆様8時間程度で戻ってこられるということでした。10時スタートで8時間ということは18時着。当時12月でしたので帰ってきたときには完全に日が暮れています。
「 まぁ、山頂についた時にきつい様ならピストンで戻ってくればいいか。」
と出発します。
順調に山頂へ
大普賢岳山頂に向かう直前の短い区間のコースタイムが2時間となっており、どんな急登が待ち受けているだろとびくびくしていましたが、あっけなく30分でそのコースを踏破してしまいました。
「なんだ大したことないな。」
そうなるとがぜん時間に余裕が出ます。山頂でしっかり休息&ランチ。時間の余裕もあるので周回コースに行く選択をします。ここまでは非常に順調な道のりでした。そうここまでは…
激下り・登り返しで体力消耗
その後も今までと同様のペースで歩を進めますが、どの区間もコースタイムをオーバーします。少し焦り始めオーバーペースで歩き、体力を失い、激下りで足にダメージが溜まります。
「どんだけつづくんだこの急な下りは…」
激下りを下りきったときにはもうボロボロでした。下りの技術がないにも関わらず急いで下ったため、特に足へのダメージが深刻でした。下りきった時点で日がかなり傾いていたのですが、大休止をとります。
「足が痛い…」
休憩中は体力回復より足を休ませることがメインになっていました。
しかしいつまでも休んではいられません。日暮れが迫っているので、疲れた体に鞭打って登り返しを登ります。登り返しは鎖場やガレ場が多く体力を使い切った体には辛い道のりです。夕暮れの中マーキングを目印に登り返しを登り切りました。
(この辺は写真を撮る元気はありませんでした。)
ついに日没
ちょうど登り切ったくらいのタイミングで日が暮れました。ここでまたも大休憩。たまたま携帯の電波(ソフトバンク)が通じたので、ヒュッテに連絡します。ヒュッテの方に現在地とヘッドライトを持っていることを連絡し、そこからの所要時間とその先に高低差のある道がないことを確認しました。ヘッドライトの明かりの満月の明かりで何とか進む道を確認できたため、下山を決行します。
その後は、本当にゆっくり道とマーキングを確認しながら進みました。幸いその先は高低差はなく、等高線に沿って歩くようなルートであったため、GPSとマーキングを確認しながら進めば迷わず歩くことができました。
無事生還
「よかったー、よかった…」
自然と口からこぼれる歓喜の声とため息。行きにも通った分岐に戻りようやくほっと一息。写真を撮る余裕も返ってきました。写真でもヘッドライトで照らしているところ以外ほぼ見えないのがわかります。といっても満月だったので、新月の時よりはましだったかもしれません。
帰ってきた和佐山ヒュッテ。朝と電話でお世話になったお姉さんにお礼を言って帰ります。到着時刻は午後18時お姉さんの行った通り、周回時間は8時間ちょうどでした。
原因
遭難しかけた原因を考えています。簡単に言うと山をなめていたのですが、どうなめていたのか記していきます。
出発時間が遅すぎる。
今回の件はそもそもここが根本原因だと思います。 朝10時スタートは遅すぎます。雑誌のコースタイム通りに帰ってきても、17時過ぎです。日没ギリギリの到着時刻の計画です。しかし、私は、登山情報サイトのヤマレコのコースタイムでもっと早いものがあったので雑誌上のコースタイム時間より短い時間で帰ることができると高をくくっていました。自身のレベルを全く理解していませんでした。
技術・体力不足
下りに非常に時間がかかってしまいました。山の歩き方はフラットフッティング(足裏全体で着地する歩き方)が基本だそうですが、私はその歩き方に慣れてなく踵から着地する歩き方で歩いていました。そうするとブレーキがかかりにくく膝へのダメージが多いことや、滑りやすいため何度か転んでしまいました。
また、体力不足により後半のペースががくんと落ち、山頂で見積もった到着予定時刻から遅れた原因です。
良かった点
最終的に無事下山することができました。疲労状態で日没を迎えてしまった中、無事下山できた理由を考えてみます。
装備が充実していた
ヘッドライト
ヘッドライトを装備しており、夜間行動可能だったため、日没後も行動可能でした。当日は満月でしたが、月明かりだけでは、山の中を歩くことはできません。日中しか登山する気がない場合でもヘッドライトは必須装備です。
防寒着・防災シート
防寒着や防災シートを持っており、最悪の場合でも一晩明かせる装備があり、気持ちに余裕ができました。
携帯電話の活用
GPS機能を利用して、自分たちがどこにいるのか正確に把握できたこと。事前に地図情報を携帯にキャッシュしておくことで電波が通じない場所でも自分の居場所を把握することができました。GPS機能自体は電波が通じない場所でも使用できることは覚えておいてください。地図のダウンロードはダンパが通じる場所でしかできないので登山開始前に絶対にダウンロードしておきましょう。
また、たまたまですが携帯電話(ソフトバンク)は通じました。回線が弱く電話だけしかできませんでしたが、ヒュッテに連絡することができ、自分たちの場所を教えることでどの程度時間がかかるのかの情報を入手できました。自分たちが無事なことを伝えることができ捜索隊に出動してもらわずに済みました。
先の道を把握していた
今回の登山に当たり事前に、コースを地図上やブログで確認していました。日没までに登り返しを済ませれば最悪下山できると計画を立てて休憩を取りながら進むことができ、体力を温存できました。やみくもに焦ってハイペースで進むより安全だったと思います。
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あわや遭難という事態でしたが、本当に運よく、またそれなりに装備が充実していたため、無事帰ってくることができました。
今回は恥ずかしい話をそのまま書き記しましたが、皆さんの遭難対策意識を高め、無事に帰ってくる助けとなれば幸いです。
これからも楽しく登山をしましょう!!